なぜ、変わりたくても
変われないのか。そして、なぜ、変われるのか。
認知科学の視点から、心の仕組みを、できるだけ専門用語を使わずにお話しします。読み終えるころには、変われなかった理由が、そのまま変われる理由に見えてくるはずです。
心は、慣れた場所へ
戻るようにできている
あなたは今、この文章を読みながら呼吸をしています。意識せずに。心臓を動かすことも、まばたきをすることも、意識してはいません。同じように、心にも、意識しなくても働き続けている仕組みがあります。
私たちの心は、慣れ親しんだ状態、つまりコンフォートゾーンへ、無意識に引き戻されるようにできています。谷底にあるボールを思い浮かべてください。強い意志で谷の外へ押し出そうとしても、坂の途中で力尽きて、また谷底へ戻ってしまう。
これは、あなたの意志が弱いからではありません。心の仕組みが、正常に働いている証拠です。
戻そうとする力は、
あなたを運ぶ力にもなる
ここに、大切な事実があります。心を慣れた場所へ戻そうとする力そのものは、善でも悪でもありません。どこを「慣れた場所」と感じているかに従って、働いているだけです。
だから、今の谷の外側に、本当に望む未来をありありと描けたとき、心にとっての「居心地のよい場所」そのものが移りはじめます。坂を上り切る必要はありません。地形のほうが変わるのです。
つまみを右へ動かしてみてください。
そして新しい谷に移ったあとは、同じ力が、今度はあなたをそこに留めてくれます。変わったあとの状態が、新しい「当たり前」になるのです。
時間は、未来から
流れてくる
私たちは普通、過去が今をつくり、今が未来をつくると考えています。けれど心の中では、時間は逆向きにも流れています。
本当に望む未来が定まると、今日の選び方が、その未来から逆算されるように変わっていく。さらに、これまでの経験の意味までもが、その未来に向かう物語の一部として組み替えられていきます。苫米地英人博士が体系化した理論の、大切な出発点のひとつです。
過去は、あなたを決めるものではありません。これから描く未来によって、意味を与え直される素材です。
方法が見えなくても、
大丈夫です
「そうは言っても、どうすればいいのか分からない」。多くの方が、ここで立ち止まります。
けれど、今の自分に方法がはっきり見える未来は、実は今の谷の内側にあるものです。本当に望む未来の道筋が見えないのは、それが確かに現状の外側にあるという、むしろ正しい印です。
人の脳は、自分にとって重要なものしか認識しないようにできています。望む未来が定まると、それに関わる人、情報、機会が、それまで見えていなかったのが嘘のように目に入りはじめる。方法は、未来を定めたあとから見えてくるものなのです。
そして、一度に跳ぶ必要もありません。今の自分から届く一歩を、未来の側から一つずつ選んでいく。その一歩の連なりが、気づけば、出発点からは想像できなかった場所へあなたを運んでいきます。
谷の中からは、
外の景色が見えにくい
問題は、その景色を一人で描き切るのが難しいということです。今いる谷の中にいると、外の景色は心の盲点に隠れてしまう。だから、外から一緒に見ている存在が役に立ちます。
変われなかったのは、
あなたが変われない人だからではない。
心の仕組みが、そう働いていただけです。
そして同じ仕組みは、望む未来の側へも、同じ強さで働きます。「自分ならできる」という感覚も、過去の実績から生まれるのではありません。未来の自分への確かな手応えから、育っていくものです。
ルー・タイスは、意味のある変化は内側から始まり、外側へ広がっていくと語っていました。自分の内側が整うと、人は自然と、誰かに手を差し出す余裕を持てるようになります。
あなたの谷の外側には、
どんな景色があるのでしょうか。